虐待に関する小児科のやりがいある取り組み

近年、増加傾向にある虐待件数の要因として、幼少期に虐待を受けた経験のある親が、同じように我が子に虐待してしまうという世代間連鎖が指摘されています。この虐待連鎖を防止するためには、適切な治療や支援を提供することが必要です。
東京都のある病院における小児科の取り組みとして、虐待連鎖を断つための心理療法が行われています。これは、親子の関わりを深めるためにアメリカで始まった親子相互交流療法、通称「PCIT」と呼ばれるものです。言うことを聞かないなどの行動に問題を抱える子どもとの関係づくりや、虐待を繰り返す親の再発予防に効果があるとされています。

このPCITは、親子二人での遊びを通じたプログラムで、1回約20分に設定されています。まずプログラムを始める前に、小児科医師や看護師から、具体的に褒めることや子どもの言うことを繰り返すこと、また子どもの行動を説明することなどを意識して声を掛け続けるよう親に指導します。加えて、質問や命令、行動の批判は避けなければならないことも伝えます。これは、子どもに遊びの主導権を握らせ、自尊心を高めることが狙いです。こうして親子間の肯定的な感情を増やし、絆を強めることができます。そうすることで、子どもの問題行動を減らせるため、親は適切な指示の出し方が可能になります。

このように虐待連鎖を防止するためには、早期発見や加害者の処罰を行うだけでは意味がありません。良好な親子関係を築けるようにするためには、子育てに悩む親や被害者の支援、再発防止のための加害者教育が必要です。小児科の医師や看護師など、子どもの健康や安全を守ることができる人たちが、やりがいを持って取り組むことが求められます。